創立大会の言葉

今春の林総長の死去を機として、わが中央大学は未曾有の重要問題に当面しております。去る七月には総長選任問題討議のための劃期的な連合教授会が開催され、つづいて新総長の就任となり、その後、夏休を終り九月に至り、新学長の任命となりました。しかるに最近、学部長会議、入学試験制度、大学院組織、基本規定の改正委員会、給与の改善等についての諸施策が矢継ぎ早に実施され、近く教員の服務規程等の新設も行われるやの新聞報道もある次第であります。これらの諸施策は、いうまでもなくわれわれ教員の教育、研究生活等について直接たると、間接たるとを問わず至重の関係をもっております。しかるに、これらの諸施策制定の経過と、影響を省察する時、遺憾乍ら、われわれ大多数の教員の声なき声を十二分に摂取し、これを反映したものとは考えられない点があります。

こうした現状において、われわれが自ら安んじて教育と研究に専念し、もって与えられた教育という高貴な使命を遂行するためには、われわれ一同の謙虚な意見と、正当な要求を民主的に決定し、大学当局と直接話合いの場を設けて、それを通じて中央大学の民主的な発展に貢献すべき義務と責任があることを痛感した次第であります。

したがって、われわれは大学の人事に干渉したり、教授会の権限をおかしたり、一党一派に偏した行動をすることを厳に慎むものであります。これを要するにわれわれは、身分や生活等について後顧の憂いなく、学生の教育と研究に専念し、それを通じて中央大学の民主的発展を念願するのみであります。これがための具体的な施策として、当面、考えられることは、たとえば教員としての身分の安定、昇進の合理化、教育・研究施設の充実、年金制度の創設、退職金の改善等であります。こうした施策による教員の経済的地位の安定こそ、充実した教育と研究の発展のための基礎的な条件であり、わが中央大学教員組合設立の究極の目的もまたここにあります。
願わくば、大学当局、学生、職員諸君の心からの御援助を期待するものであります。

一九五八年一二月二五日

中央大学教員組合創立大会一同

中央大学教員組合のご紹介

中央大学教員組合は1958年12月に結成されました。翌年の1959年12月には法人格を取得し、2008年には結成50周年を迎えました。結成以来今日まで本組合は、本学における教職員の生活向上、研究・教育諸条件の改善、大学の民主化など、多岐にわたる活発な諸活動を展開し、教員の生活と権利をまもる上で多くの成果を得て、中央大学の発展に少なからず貢献してまいりました。

この間、中央大学は学部・学科の新設、夜間部廃止、大学院改革を進め、専門職大学院を設置し、新しいあり方を模索しています。また、入試の多様化なども行い、18歳人口の減少への対応がとられてきています。国立大学の独立行政法人化、大学間の「生き残りゲーム」などが、各大学において種々の問題をもたらしており、中央大学も例外ではありません。こうした学内・外における情勢の変化(大学が大学でなくなる危機)の中で組合の果たすべき役割は以前にも増して大きくなってきているように思われます。

教員組合は、大学人すなわち“智(cumscientia)の職人”の自治組織であると考えられます。大学という場においては、学生・教職員のひとりひとりは、大学としても個々人としても既存の枠組みの境界を越え出ていくことをめざし、自己革新に挑戦すること、地域の具体的な問題に接近する力(同時代性と問題指向性)、断片化することなく複合的に現実を把握する力(複合性)、地域的かつ地球的な複数の視覚・立場からの現実把握と対話をおこなう力(複数性と相補性)、可変的な状況の背後にある根本問題を深く考える力(根源性)をもった“社会の智者”が育成される場を創り上げることに全力を傾けていることが前提となるべきだと思います。そのうえで、個々の大学人の潜在力を尊重しその力を有機的に結びつけることを出来る限り阻害しない場とすることに重きをおいた、教員組合の活動に取り組んでいけたらと考えております。

私たち教員組合はこうした問題を皆様方と共有し、ともに解決して行きたいと願っております。どうか本組合の活動にご理解をいただき、皆様方の知恵と勇気と力をお貸しくださるよう重ねてお願い申し上げます。

中央大学教員組合